本の紹介『うつ病休職』

安易な診断はすべきでないという意見です。

中嶋聡 『うつ病休職』 新潮新書、2017年

別の本を買いに行ったときに近くにあったので買いました。いま見たらKindle版もあったので、そちらにしてもよかったかな。著者は現役の精神科医で、現場での体験も交えてうつ病の現状を紹介しています。

いまや、多くの会社員がメンタルヘルスで問題を抱える時代です。何が原因なのかは判然としませんが、社会学的には社会の在り方やライフスタイルの変化というところから説明できると思いますし、経済学的には経済成長の鈍化やグローバル経済の進展によるビジネス環境の変化というところからも説明できると思います。

さて、うつ病とひと言で言っても、診断には段階があるようです。最近増加しているように見えるのは、ちょっと前に基準が変わって、今までうつ病の範疇に入っていなかった状態もそれと認められるようになったからというのも一因だそうです。

最近多いのは、診断書を出して欲しいと来る患者だそうです。自分の判断で来る場合や会社からの指示で来る場合があり、前者の場合は会社を公式に休みたいからというのが大半で、後者の場合は会社の規則であったり、上司の独自の判断が多いみたいですね。

原因がハッキリしているものは「抑うつ状態」と呼ぶらしく、著者はこの段階ではうつ病の診断書は出さない方針だそうです。診断書を出さないと怒ってしまう患者も多いみたいですが、そもそも原因を解消すれば治る部類のものなので、そこを解消するようアドバイスをするそうです。医者によってはその状態でも診断書を出すことがあるらしく、そういった医者は口コミで流行っているとのこと。

普通のサラリーマンは多くのストレスを感じながら仕事をしていると思いますが、そういうときこそ上司や仲間との連携が必要でしょう。構造的にそうなってしまっているのかどうかは不明ですが、そういった連携が足りてないのかなとは日常的に感じます。

最後に評価ですが、うつ病での休職の現状は理解できましたものの、それに対する処方箋的なものを求めていたというのもあり、星3つです。


評価:★★★☆☆

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